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夢はなんですか、と聞くと、西本さんは自分のことではなく「鮎がなあ」と話し始めた。

「昔の鮎にもどってほしいな」という。 鮎というのはもともとは湖産で、くみ上げた稚魚を漁業組合が買い取り、それぞれ放流していた。

1キロあたり200~300匹はいたという。小さかったが闘争心も強く、よくかかった。
今は、川で産卵、ふ化した鮎が海に下り、3月ごろ登ってくる「海産鮎」を養殖し、1キロで100匹程度の大きさになってから放流される。

体は大きいが、本来の闘争心が弱くなったと西本さんは感じている。
鮎は本来なわばり意識が強く、一匹で行動するはずなのに、流れの中心にまとまって集団で移動する姿を見かける。目のついている位置も変わった。
養殖鮎は上からエサがふってくる。真横についていた目が だんだん上になってきたという。
西本さんにとって鮎は単なる狩漁の対象ではなく、いつまでも手ごわい存在でいてほしい好敵手なのだ。
大塔の美しい山と水の間で、これからも数々の名勝負に期待したい。